小さなテーブルをはさんだ向かい側に、目つきのするどい体格のいい男が座っている。この男は、刑事だった。
刑事は、いすの背もたれにふんぞりかえった。
「おまえ、うそはやめろ」
「うそ?」
男は、顔も上げずに言った。
「おれは、自分から自首してきたんです。今さら、うそなんかついて何になるんですか。おれが空き巣に入ったのは、今、しゃべった家が全部ですよ」
「いや、そうじゃない。なぜ、自首する気になったかだ」
「だから、さっきも言ったように・・・・・・」
「ああ、ねこだろ。空き巣に入った家のねこを抱いているうちに、自首する気になったんだな」
「そうです。こんなことをしている自分が情けなくなって・・・・・・。ただ、それだけです。うそなんか、つきませんよ」
「だがなぁ」
刑事は、机の上に両手をのせて男の顔をのぞき込んだ。
「あの家の奥さんは、ねこアレルギーだそうだ。だから、今まで、ねこも犬も飼ったことはないそうだ」
男は、刑事が何を言っているのかよくわからなかった。
「でも、ちゃんとねこはいましたよ」
「いいかげんなことを言うな。あの家の人は誰も、グレーのねこなんか見たことないそうだ」
男は、刑事の方へ身をのりだした。
「そんなはずはありませんよ、刑事さん。絶対に、ねこはいました」
そのあとの言葉を、男はぐっと飲み込んだ。あのとき抱いたねこのぬくもりを、まだ覚えている。ほほをなめる舌のざらざらした感触は、なぜかなつかしい気がした。
「ミーコに、そっくりなねこが・・・・・・」
おわり
やっぱり遅れてしまいました。ごめんなさい。 いかがでしたか。また感想など聞かせて下さいね。年明けより第二弾を新連載始めます。お楽しみに。 では、皆様、よいお年を。
投稿者: おおもり
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