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大森ちゃんブログ

ねこは いない  (その5)      (2009年12月21日 09:59)

「なぁん」

 その声が、あまりに大きくて、男は自分の耳が引きつるような感じがした。ねこは、男を見上げてまた声を上げた。

「なぁーん、なぁん」

 ねこは、動かない男に、人が来たことを教えているのかもしれなかった。なぜ、返事をしないのかと言っているのかもしれなかった。だが、男には、ここに泥棒がひそんでいることを、外の男に教えようとしているように聞こえた。

 どうにかしてねこを鳴き止ませたかった男は、とっさにしゃがみこんで自分の胸の中にねこを抱きかかえた。

 勝手口では、電気屋の若い男が、家の中に誰かいるのかとようすをうかがっている。

「こんにちはぁ、誰かいませんかぁ」

 男は、ねこが鳴き出さないようにぎゅっと抱きしめた。ねこのぬくもりが、じんわりと伝わってくる。ねこは、しなやかな舌で男のほほをなめる。男は、そのくすぐったさにじっと耐えていた。

 

 冷たい、コンクリートの壁にかこまれた狭い部屋で、男はうなだれていた。今は、帽子もサングラスも手袋もつけてはいない。

                             (つづく   次回は12月26日配信  今度は守るからね、ごめんなさい。)

投稿者: おおもり

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