男は、はっと息を飲んで立ちつくした。動いてはいけない。外の人間に、中に人のいる気配を悟られてはいけない。
ピーンポーン、ピーンポーン。
外の人間は、しつこくチャイムを鳴らす。
男は、窓のカーテンに自分の影が写らないよう、部屋のすみへからだを寄せた。
チャイムの音が止んで、しばらく静かになった。外の人間は、立ち去ったのかもしれない。男は、息を長く吐き出した。さっさと、金を探し出して逃げ出そう。
すると、今度は勝手口のドアノブをガチャッと開ける音がした。男は、全身にぞっと鳥肌が立つ思いがした。
「ごめんください」
若い、男の声だった。
「森下電気ですが、テレビの修理に来ました。留守ですか。」
男は、壁にぴたりとからだを寄せる。今、ここで見つかりたくはない。男は、閉めてある窓にゆっくりと手を伸ばす。いつでも逃げ出せるように、窓のかぎだけは開けておこうと考えた。
ところが、そのとき、足もとにいたねこが鳴いた。
(つづく 次回は12月19日配信)
投稿者: おおもり
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